コレクションT 岡本秋暉 |
号 |
小田原藩士、名は隆仙、字は柏樹、通称祐之丞、「秋暉」はその号で晩年は秋翁とも号しました。
生没年には諸説ありますが、文久2年に57歳で没したとの説が有力です。
系列 |
大西圭斎、渡辺崋山に師事したといわれ、椿椿山らとともに崋山十哲に数えられます。
一説には、崋山とは絵画を通じた友人関係であり、師弟関係はなかったともいわれます。
いずれにせよ、谷文晁に端を発する関東文人画系に位置付けられる画家です。
画風 |
極彩色の花鳥画を得意とし、独特の濃密な作風は、南蘋派・
円山派・崋椿系の影響を受けつつも一線を隔し、特異な趣を
持ちます。特に孔雀の描写には定評があり、「若冲の鶏」
「光起の鶉」 「狙仙の猿」 などと並んで、「秋暉の孔雀」と通り
名で称されます。
|
 |
実績 |
作品は、東京国立博物館、京都国立博物館、出光美術館、静嘉堂文庫美術館、山種美術館、
松岡美術館、ボストン美術館、プライスコレクションなど、内外の著名な美術館に所蔵されてい
ます。二宮尊徳画像集(神奈川県指定重要文化財)、小田原城内板絵(小田原市指定重要文
化財)、花鳥画(足利市指定重要文化財)などの作品が、それぞれに文化財指定を受けていま
す。
本コレクションにおける装体による分類 |
・屏風:春秋花鳥図、月下双鹿図など6点
・襖絵:四季花鳥図など2点
・巻子:鳥絵手本など2点
・画帖:花卉〓毛図の1点
・扇面:藤図など2点
・掛軸(対幅):花鳥図(12帳対)、梅竹キジ/松菊金鶏鳥図(双幅)など7点
・掛軸(絹本):孔雀図、仙鶴伴雛図など24点
・掛軸(紙本):波に鰹鳥図、郡鶯図など25点
*〓は令へんに羽(レイ)
本コレクションに網羅される画題 |
・ 鳥
:孔雀、鷹、鷲、鶴、鴨、キジ、鶏、鶯、鴛鴦、鵜、雀、燕、雁、他小禽類多種
・ 花 :梅、桜、牡丹、菊、藤、松、各種秋草など
・動 物:鹿、虎、竜など
・昆 虫:蝶、蜻蛉など
・人 物:紙雛、鐘馗など
・その他:福田半香、羽田子雲、佐藤一斎ほかとの合作
補足 |
江戸時代の画家は、生涯を通じて画風を大きく変えていくことがあります。岡本秋暉も、沈南蘋に
よって日本に伝えられた明清画、円山応挙に代表される写生画、渡辺崋山と弟子の椿椿山によっ
て描かれた崋椿系など、それぞれの画趣を想起させる作品、更には、伊藤若冲の動植採絵に描
かれる奇想を彷彿とさせる作品を残しています。しかし、多くの他の画家と同様に、生涯の画業に
ついて未だ包括的な研究は進んでいないのが現状です。本コレクションは、秋暉が好んだ多様な
画題を集約するとともに、作画期を比定するに重要な落款・印章も豊富であり、今後の秋暉研究に
おいて重要な資料として寄与できると考えます。
|